忍者ブログ
衒学衒学ゥ!
[PR]
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

・タイトルの元ネタが解った人、友達になりましょう。


Date: 2006年04月29日 22:25

・蕎麦を茹でる匂い。どうしてあんなにいい匂いなんだろう、と思うのとともに、なんだか懐かしい気分になる。遊び疲れて夕日の中家路につく時を思い出すかのような。


昔昔のことである。
橡の父にあたる人(父だって、プ、でも染色体を半分受け継いでいるからそう呼ぶより他無い)は蕎麦屋を営んでいた。
当時の自分はよく開店前の厨房に入って、もうもうと湯気を立てる、中身の見えない鍋の並ぶ銀一面のその小部屋を歩き回った。

そうこうしているうちに、目が痒くて開けられなくなる。蕎麦アレルギーであることは、そのうちに血液検査ではっきり解るようになる。

しかし、それでも疎外感を覚えたとか、父親との関係がギクシャクしたとか、そういう記憶は全く無い。いかにも家系的な対応だ。

時は90年代初頭。熱病に浮かされた日本人の終焉。バブルが崩壊した時、父は3代続いた蕎麦屋の暖簾を下ろした。もう蕎麦と関係を持つことは無い んだな、と思ったかどうかは知らないが、実際は何の特筆すべき感情も湧かず、でも確かに関係は持たなくなり目が痒くなる事も夜通し咳が続く事もなくなっ た。



東京人は蕎麦が好きなイメージがあって、蕎麦屋が多いのはその所為だろう、と勝手にこじつけている。
兎に角今日も蕎麦を茹でる匂いが、街中一筋の光のように漂ってくる。
いつか味を感じてみたいと思う、アナフィラキシー・ショックの匂い。死の香り。そして郷愁。
PR
・結婚式は、そうだな、北欧か南の島か、とにかく誰もいないところでしたい。


Date: 2006年04月22日 08:22

・人は何故、結婚式を挙げたがるのだろう。

葬式についても同じ事が言えるのだけれど、葬式は色々と柵が有るだろうから取り敢えず置いておく。

結婚式。招く側は恥かしく(結婚後、年を追う毎にどんどん羞恥度は増す。要はイタい)、招かれる側はひたすら退屈(時として余興なんかもやらねばならない。地獄)、得をするのはウェディング・プランナーだけ、という世紀の狂宴。
結婚したら、必ず結婚式を挙げなければならない、という家訓かなにかがあるのだろうか。
ウチがそんな家訓が無い家だったことを幸せに感じる。確かに実家は恐ろしく狭いが、よい家庭に恵まれた。親に感謝したい。

それました。
そんな家訓が無くても、本人たちの趣味でやっちゃうのかもしれない。人は自分を、よく悪趣味だというけれど、結婚式を挙げたがる趣味よりは幾分マシな気がする。

でも、「よい結婚式」というのが100件に1件くらいの割合であるらしい。この前母が感激していた。
でも人は一生のうちで何件の結婚式に参加するのだろう。ある映画マニアの人がこんな事を言っていた。
「本当に良い映画は100本に1本も無い。だがその1本を探す為に100本を観る。」
よい結婚式は参加すれば感動するかもしれないが、行かないに越した事は無い。

幸い未だ結婚式に呼ばれた事は無い。これからもそうであってほしい。儚い望みかもしれないけれど。
先ほど少し口走ったが、葬式は大嫌いだ。人の葬式には絶対行かないし、母親が死んだとしたら、一族を敵に回しても葬式はしない心積りだ。
3日くらい前の地震の時も、「ついに立ち眩みならぬ坐り眩みをするようになったか」と思いました。


Date: 2006年04月21日 08:17

・ずっと、遠い所へ行っていた。
というのは嘘なのだけれど、精神的には遠くにあったような気がしてならない。


・昨日眠りに就く前に、目覚し時計を午前2時半あたりから30分ごとに設定した。
因みにその時の時間は午後8時半だったし、前日徹夜なのでこの時間設定は決して早くはない・・・やっぱ早いな。

案の定、30分ごとに起きて目覚ましを止めてまた寝る、という行為は5時半まで連続し、よく寝たという爽快感(9時間睡眠、考えただけで頭が痛く なる)、時間を無駄にした事への後悔(起きていた処で、どうせ実の有る事なんかしないだろう)、沢山の朝の細切れの記憶を抱えて、今に至る。


その中に、揺ら揺ら揺れる画面の記憶があった。
あれは、地震だろうか。
地震だとしたら、かなり震度の大きい地震だ、といっても実際は3とか4とかその程度に違いない、人間は敏感だから。

地震が起こると、先ず立ち眩みを疑う。揺れているのは自分の意識なのか?それとも地面か?
全く確信は出来ない。実家には電気の紐が有ったが、今の生活は空中からぶら下がっている紐の無い生活だ。
揺れる視界は暫く続く。頭蓋骨の中にブランコが出来て、脳を乗せているかのようだ。眩暈が終わると、地震があった事は全く信じられなくなる。
脳が上手くブランコを漕いでいるのかもしれない。震度もマグニチュードも、何か別の数値に感じる。色々な金属のヤング率を眺める小学生の気分だ。

寝ている間の地震の記憶でもう一つ。
ある朝、なぜだかわからないけれど目が覚めた。親子で寝ていたが全員起きていて、?マークを押し当てられたような顔を布団から首を出したまま見合った。
母親が言う。そこのタンス蹴らなかった?ガンガンいう音がしたのだけど。
首を横に振る。タンスは、ドロップキックでもかまさない限り蹴れない位置にあった。プロレスラーではないただの小学生、ヤング率の意味も単位もしらない子供だった。
まだ外が暗く、起きる時間では無かったので布団に潜りこんだ。

起きる時間。いつもの朝。いつもの目覚め。違ったのは、明け方の奇妙な出来事。
だけだと思ってテレビに目をやった。惨憺な状況の神戸の街を映し出す、いつもの朝の光を浴びたいつものテレビ。
・もう一生吸う事はないだろう。その代わり、ミンティアの消費量が激烈です。


 Date: 2006年04月15日 22:38

・初めて煙草を吸ったのは、20歳になったばかりの、人々がコートの襟に首を埋めて駅前を通り過ぎる12月の暮れだった。

煙草に火をつける。酷い匂いのする煙を吸う。メンソールが口腔に満ちる。

部屋で絶対に吸わないし、人前でも吸わないようにしているので、煙草の記憶は白いもや越しの、独りぼっちのカフェや、地球が滅亡した後の静けさを湛えた夜の公園と結びつく。

他人が1日どのくらい吸うのかは知らない。兎に角あの匂いに耐えられないので、1日に3本を超えて吸うことは無かった。儀式のように厳かに煙草を銜える。

数箱を空にし、それっきり吸う事を止めてしまってから1ヶ月半。禁煙、という響きが何となく可笑しくて自販機には見向きもしなかった。

昨日は珍しく晴れたし、気温も高かった。桜の下で煙草を吸った。
吸った瞬間思ったことは、禁煙という言葉のばかばかしさだった。
悩みも蟠りも全て、口から出て優しい春風に乗ってどこかに行ってしまいそうな気がした。

煙草の煙の匂いは大嫌いだ。このまま喫煙者として生きることの不安は、健康よりも口がこの匂いにいつか占領されてしまう日が来る事だ。いっそのこと、その日が来てしまう前に死んでしまいたい、とさえ思わせる。

煙草の匂いと思いを分かち合う事は決して無いだろう。いつまでも嫌いなままだ。
これでいい。これで煙草を頼りにしなくて済む。
・もう洗濯物が無くなっても判らない、気づかない。やばいな

 Date: 2006年04月11日 22:53

・風の強い日だった。

でも、とても晴れていたから、いつものように洗濯物を干した。

夜帰ってくると、疲れが一気に放出されるのか崩れ落ちるように眠ってしまう。
その日もそうだった。いつものことだから洗濯物は明朝取り込むことにして。

朝、開けると洗濯物は消えていた。
物干しロープの上は綺麗に片付いていて、突っ張り棒にハンガーで吊るしたワイシャツが視界を横切っては戻っていくばかりだった。

風で飛ばされたんだろうか。でもそれなら、ピンチで留めた洗濯物の前にハンガーが攫われていくはずだ。取り込んだのかもしれない。記憶は全くないけど。ピンチを数えてみよう。いや、最初の数を覚えていないから減ったかどうか解らないじゃあないか。

念のためベランダから身を乗り出して辺りを見回してみたがそれらしいものは何も見つからなかった。

これは数日前の出来事だ。自分の衣服の中で足りないものを調べれば済む・・・と思った。しかし実際、自分の服のストックなんてなかなかどうして把握していないものである。時間は流れ、取り込んだのかどうかは完全に解らなくなった。

服が無くなった、というはっきりした証拠は無い。でも何故だか、クローゼットを開けても何か足りない気が無性にする。どのシャツ、ではなくて、それはきっと名指し出来ないものだ。

人間の記憶、思い出、憧憬、そんなものだって朝カーテンを開けたらぽっかり消えているかもしれない。どんなに大切で、慈しんだものであろうとも。そして、無くしたかどうかも確信出来ぬまま、時間が過ぎる。次の洗濯。次の晴れた日。言い様の無い喪失感を残して。
記憶は綿や麻のように、肌を滑る確かな感覚はあるだろうか。思い出にはクローゼットがあるだろうか。現実はどうあれ、洗濯物は失われた。

風の強い日だった。よく晴れた空が、少しだけ恨めしかった。
PREV ← HOME → NEXT
最新CM
[08/07 橡]
[03/19 ユリー]
[04/19 ユリー]
[07/09 ガイル]
[05/10 tom]
最新TB
プロフィール
HN:
年齢:
39
性別:
男性
誕生日:
1985/11/25
職業:
自由人
自己紹介:
麒麟さんが好きです。
でも象さんはもっと好きです。

やっぱり麒麟さんが好きだ。
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]
 △ページの先頭へ
Templated by TABLE ENOCH