・もう一生吸う事はないだろう。その代わり、ミンティアの消費量が激烈です。
Date: 2006年04月15日 22:38
・初めて煙草を吸ったのは、20歳になったばかりの、人々がコートの襟に首を埋めて駅前を通り過ぎる12月の暮れだった。
煙草に火をつける。酷い匂いのする煙を吸う。メンソールが口腔に満ちる。
部屋で絶対に吸わないし、人前でも吸わないようにしているので、煙草の記憶は白いもや越しの、独りぼっちのカフェや、地球が滅亡した後の静けさを湛えた夜の公園と結びつく。
他人が1日どのくらい吸うのかは知らない。兎に角あの匂いに耐えられないので、1日に3本を超えて吸うことは無かった。儀式のように厳かに煙草を銜える。
数箱を空にし、それっきり吸う事を止めてしまってから1ヶ月半。禁煙、という響きが何となく可笑しくて自販機には見向きもしなかった。
昨日は珍しく晴れたし、気温も高かった。桜の下で煙草を吸った。
吸った瞬間思ったことは、禁煙という言葉のばかばかしさだった。
悩みも蟠りも全て、口から出て優しい春風に乗ってどこかに行ってしまいそうな気がした。
煙草の煙の匂いは大嫌いだ。このまま喫煙者として生きることの不安は、健康よりも口がこの匂いにいつか占領されてしまう日が来る事だ。いっそのこと、その日が来てしまう前に死んでしまいたい、とさえ思わせる。
煙草の匂いと思いを分かち合う事は決して無いだろう。いつまでも嫌いなままだ。
これでいい。これで煙草を頼りにしなくて済む。
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