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「 椿色の微笑み 」
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・タイトルの元ネタが解った人、友達になりましょう。


Date: 2006年04月29日 22:25

・蕎麦を茹でる匂い。どうしてあんなにいい匂いなんだろう、と思うのとともに、なんだか懐かしい気分になる。遊び疲れて夕日の中家路につく時を思い出すかのような。


昔昔のことである。
橡の父にあたる人(父だって、プ、でも染色体を半分受け継いでいるからそう呼ぶより他無い)は蕎麦屋を営んでいた。
当時の自分はよく開店前の厨房に入って、もうもうと湯気を立てる、中身の見えない鍋の並ぶ銀一面のその小部屋を歩き回った。

そうこうしているうちに、目が痒くて開けられなくなる。蕎麦アレルギーであることは、そのうちに血液検査ではっきり解るようになる。

しかし、それでも疎外感を覚えたとか、父親との関係がギクシャクしたとか、そういう記憶は全く無い。いかにも家系的な対応だ。

時は90年代初頭。熱病に浮かされた日本人の終焉。バブルが崩壊した時、父は3代続いた蕎麦屋の暖簾を下ろした。もう蕎麦と関係を持つことは無い んだな、と思ったかどうかは知らないが、実際は何の特筆すべき感情も湧かず、でも確かに関係は持たなくなり目が痒くなる事も夜通し咳が続く事もなくなっ た。



東京人は蕎麦が好きなイメージがあって、蕎麦屋が多いのはその所為だろう、と勝手にこじつけている。
兎に角今日も蕎麦を茹でる匂いが、街中一筋の光のように漂ってくる。
いつか味を感じてみたいと思う、アナフィラキシー・ショックの匂い。死の香り。そして郷愁。
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