・連休明け、僕は後遺症を引き摺り、普段の生活に戻れずに晴れた5月の道をふらふら歩き、空を仰いでいた。
山積みの仕事を小さな机の脇に押しやって「デスヴォイスの出し方」を調べていたのは、そんな倦みによる。
去年の夏あたりから、橡のヘヴィヘタル嗜好もついにデスメタルへの参入を始めたわけだが、デスメタルにつきもののこのデスヴォイス、ただ濁った声で叫べばいいかというとそうでもなく中々に深遠なものなのだ。
生半可な心構えではすぐに喉を潰してしまう。いくら心が象牙の塔での生活から乖離しかけている自分とはいえ、まさか「なあ、俺たちと一緒にデスメタルやろうぜ」と言われる事も無かろう、しかしそれでも世のデスメタラーは1時間も2時間もデスヴォイスを発し続けている事もまた事実である、それが出来るという事は何かのトリックがそこにはあるに違いない。そう思って調べた。
結果からいうと「腹から出せ」「喉を締めるな」「練習しろ」との事であまり実りはなかった、いや有ったというべきか、机の脇にあった小高い山を自分の前までツツと持ってくる気になったのだから。連休は終わった。
ちなみに最近は「びちゃびちゃしたデスヴォイス」が好きだ。Cradle of FilthやDimmu Borgirのような。巨大な水滴がフラットで硬い平面に落ちる時に立てる音の様な声だ。Dimmu Borgirは世界観も良いのでかなり好きだ。Wikipediaには「ノルウェー国王の前で演奏した事もある」とか書いてあるけど本当かな?本当だったら北欧の音楽文化みたいなものがちょっと不安になる。
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