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「 夏の扉、異境へ 」
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・朝、髭を剃っていて、鏡を見ながらふと我に返るとジョジョ立ちをしていた。


・「『ポイントカード』という言葉を一瞬でも口走ったら、おまえの魂をもらう」

とプリントされたTシャツを着て買い物に行く事を真剣に考えた。


・その実直な男はサングラスをかけていた。

真面目さを絵に描いたような男だ。
鑿と槌で体を彫って中からものさしが出てきたとしても全く驚かないだろう。
絵に描いたような、という言葉は比喩ではない。
外見からして真面目だ。

5月も後半になると、梅雨前の夏の予行演習の様に、
日中は日差しが照りつける。木々の葉は爽やかな翠を照り返し、
眩しくも優しい光を湛えている。

その日も日差しの強い日だった。
そんな日中にサングラスをかける事は至極当たり前の事なのだ。
しかも大門のような大きいサングラスは、紫外線への十分な対応を示している。


なぜだろう、それなのに、このかき乱される心は。


レトロスペクティブなサングラスをかけた男は、
いつも向こうの席に見えるお馴染みの実直な男から、
正体不明の実直な男になっていた。

擾乱の直中にある心を隠しながら会釈したことが、
正しい事かは解らない。
あの男の骨格、あの男の服装、
なのにこの人には、会った事が無かった。

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