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「 囁き 」
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囁き
・某「黄色い看板」のラーメン屋に行ったら、目の前でシャッターを下ろされた。 
時計を見ると、ラーメン屋はこれからが稼ぎ時じゃないかと思える時間だ。
飲み会後によく感じる、ラーメンへの渇望を釣り上げる事はラーメン屋の使命に近いと考えていたのだが。
やるせなさ、駅までのだらだらと続く道をただ戻るしかなかった。


 ・鍋が自慢の居酒屋の前で、数人の男女がたむろしていた。
4人くらいいてお洒落な見目形だったが、全員メガネを掛けていた。 

さぞかし闇鍋ライクな気分を味わえた事だろう。
そして時に、箸と箸がぶつかって「あっ、、、」とか。 
と妄想したが、普通は鍋に直接箸を入れる事はない。
育ちの悪さが露呈してしまう。見るな!


 ・雨の降る朝、いつもの電車、
いつもと反対側の景色を見ると白い列車が並走していた。
 列車の側面、扉の左上あたりには、行き先を告げる小窓がある。
雨粒とガラスの向こうに見えた小窓では、ルーレットのように行き先が変わり続けていた。 

大変だ。
あの列車はどこへ行く気なのだろう。
あんなに沢山の、忙しそうな都会の人々を乗せて。
車掌が迷っているのか、運転手が迷っているのか、犯人が迷っているのか、戯れか。
 いつもの駅に着く。朝の雑踏と、幾重にも並ぶホーム。
その向こう、白い列車が尾をひく。 


・夢を見なくなった。
芝居で場面が変わるように、夜が終わり朝が始まる。
眠りは暗転。音も無く光も消える。 
開けっ放しの窓から入る蚊。その羽音、静寂を震わせ惰眠を乱す。
昔の記憶に、羽音を聞いたら寝返りを打て、というのがあった。
ごろん。弾みを付けて寝返る。空気がすこし軋んだ。 
暗転で場面が変わるなら、夕べと今朝では何かが変わっているはずだ。
日付は変わっているだろう、いや最近は変わる事が少ないが。
背景も大道具も変わりはしない。 
シーツを改めて、枕のそばの黒い点を見つけた。
どうやら寝返りは効果が有ったらしい。
そしてこれが、唯一つの目に見える変化だ。
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