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「 フィッシャーマンズ 」
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・言葉がうまく紡げない。

出口、いや口じゃない、それが生じる頭の中で既に、穴が絞られるように流れが悪くなる。
言葉は生まれる瞬間に炸裂する。花火だ。頭の中の花火。誰の目にも、自分にすら見られる事のない花火。

こんなときは、自分が自分の体の幅ほどしかない透明なチューブの中をずっと這っている気分になる。
真横には1センチも動けず、前か、振り返る事のできない後ろに這う。這い続ける。
手をぺたぺたつけて、皮脂でチューブを曇らせて、もぞもぞと、舌を噛み切りたくなる程もどかしい速さで。
チューブの外ばかりがよく見えるのだ。自分の体はろくに見えもしない。


眠れば言葉と思考の世界は終わる。逃げられる。
その先は海の汀、二人の釣り人が岸に座って一本釣りをしている。
ディズニーの映画に出てくるような仕草で、交互に竿を引っ張り、勢いよく魚を後ろに飛ばす。
休み無く淀みなく。魚は海にうじゃうじゃいるのだろうか。釣り人はまるで機械のように、釣竿を上げ下げ繰り返す。竿を振り下ろす。引っ張りあげる。魚が猛烈なスピードで真後ろに発射する。糸が蛇のように撓る。針が海を襲う。
魚は正確な間隔で後ろに飛んでくる。一列に並んだ羊の群れが、次々に柵を飛んでくるみたいに。



その光景を後ろで見ていた自分を、夢は見過ごしてくれなかった。
後ろに飛んできたテグスの先。いつの間に魚篭に入ったか、魚は消えて卵型に曲がった針があるばかり。
針の返しが左から右から交互に顔を捉えて、そのまま前へ。


青く暗い。深海のような朝だった。
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