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「 硫化アリル 」
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tamanegi2-400.jpg・たまねぎを切った後の手の匂いを嗅ぐのが好きだ。
この匂いはなかなか持続的で、手を石鹸で洗ったくらいでは落ちない。
だから良い。朝の匂いが夜まで残る。
夜、手を顔に近付ける、それだけで、今朝はたまねぎを切ったのだなあと、朝の記憶が蘇る。
一日、あまりに多くの事を処理すると、眠りに就く頃には今日の始まりの事なんてだいぶ霞みが懸かってしまう、21世紀は昼が長く、人にはする事が多いから。



・たまねぎの匂いがするのが決まっていつも左手なのは、たまねぎを押さえるのがいつも左手で、それは包丁を持つのが必ず右手だからだ。
利き手だけは何十年生きても変わらないものらしい。今までに何度か左利きに自分を変えようと試みたが、全て失敗に終わっている。手を使う動作で毎日行い、かつ最も頻繁に行うものは箸を使う事と字を書く事だが、なぜかこの二つは使用頻度が多くて慣れている筈なのに、ほかのどの動作よりも利き手でない手で行う事が難しい動作である。
このまま一生、利き手が変わらずにいて、このまま一生、たまねぎを切り続けていくとしたら、何十年かの後には、この匂いは表皮の僅かな皺の狭間にまで染み込んで、常に香辛味を静かに放っているようになるかもしれない。

そしていつか死がやってきたとき、誰かが左手を顔の前に持っていき、こう言う。「この人は右利きです。」と。
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