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「 北を向く 」
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・北枕で寝ている。


北枕の戒律には昔から厳格な方で、外で寝る前には方位磁針を覗く事が儀式の様になっていた時もある。

幼いあの日、北向きに寝かされていた、顔も体も覆われた物云わぬ人。北に枕を向ける度にピクリともしない蒲団の盛り上がりを鮮やかに浮かべる。

けれど今は昔より気にしなくなり、部屋の構造上、北枕にすると何かと便利である事に気づいたので、水が高きから低きへと流れていくように易きへ流れ、迷信から目を背ける事になったのだ。



ドアを開けるとベッドがある。内側に開くドアが当たるか当たらないかの狭間にベッドを置いたのは、年初めの模様替えの折の事、
今年はさぞ切り倒されたまま永きに亘り風雨に晒された倒木の様な擦切れた肉と霊とで、
毎夜毎夜このドアを開けるだろうという予感がしたからだ。

実際丸太のように疲れ果てる事はあれ、ドアを開けてそのままベッドに倒れ込む事はない。
しかしドアを開けてまず主人を迎えるのが、最も奥に安置されるべき寝床であるという配置に趣を感じたのでそのままにしている。



今までは足をドアに向けて寝ていた。
南を向いた窓に頭を向け、朝は開け放したカーテンの間から注がれる曙光に濡れる。
(濡れているのはただの寝汗です)

北枕を受け入れるという事は、足を窓に向け、ドアに頭を向ける事。
ドアの振れ幅ぎりぎりのベッド、その端に延べた枕に頭を委ねて眠る。
もしも誰かがドアを開けたら、伸ばした手の先には頭が触れる。

開けるのが、巨大な斧をかざした異形の者だったら。
(武威みたいなやつ)

ガチャ、ブンッ!・・・・・・ゴロゴロゴロ

となるかもしれないと思いつつ、
熱と眠りとには勝てずに今日もドアを少し開けて北枕。
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