・酒を飲んでいる訳でも無いのに、パンツについて熱く語ろうと思う。
そして私は新世界の神となろう。
なんだねその目は。神を意味する英語Godが何故大文字から始まるか知っているのかね?
何故なら!孤高の存在だからだ。神に連れなど不要!
・初まりはブリーフ。それはやがてトランクスへと変わる。これは何か。
ギリシア神話、スフィンクスがオイディプスにかけた謎は、
「時に二本足、時に三本足、時に四本足の生き物は何か?」であったが、
上記もそれに通じるものがある。答えは人間の男だ。
ほとんどの男がトランクスに進化し、多くの男の進化はそこで止まる。
いや、多く、と書いたが本当にトランクスが多数派なのだろうか。
嗚呼、俺は何を話しているのでしょう。不意に正気に戻る午前4時よ。
以下トランクスが多数派として議論を進めることにして、
この橡は完全にアンチ・トランクス流派である。
多数派をことさらに否定して優越感を得ようとする輩が特に夏は蔓延する傾向にあり、
そういう姿勢はあまり美しくないといつも心に決めているのだが、
まあ本当に美しい心のある住人は声高にパンツの話などしないだろうし、
ここは多数派だろうが何だろうがトランクスに辛辣なる批判を呉れてやる。
トランクスは唯の布である。
衣服というものは、体の中心部に向かうにつれて密着度が増していくべきだと思う。
一般的なジーンズよりも体への結合力の緩いものは下着とは呼べない。
ゆえに許されない、トランクスという存在は!
・しかし、かく言う橡も十数年前は、トランクスを希求し、これを愛用する小学五年生だった。
今では人が変わったようにボクサーブリーフにしか目を向けなくなってしまったが。
この年齢になると急に、ブリーフなどというものには恥辱と俗悪さしか感じられなくなってしまう。
何故かは解らないが、ブリーフを履く事がたまらなく厭になり、
箪笥を抽いてもブリーフしか待っていない状況に怒る。
思うに、これはだんだん自分の着ているもの、履いているもの、
そしてそれを纏う自分に意識と疑問とを投げかける、そう、
あの七面倒な「思春期」の萌芽ではないだろうか。
理由なんていらない。この押し付けられたもの全てを跳ね返したい。
密着感のまったく無い下着を穿いて、少年は初めて束縛から逃れられたつもりでいる。
・人、生まれし時は手足で這い、
やがて立ち上がり、歩き、
老いて杖をつく。
謎かけに正解したオイディプスは、答えの通りにはならなかった。
運命に絶望した彼は盲となり、娘に両手を引かれて歩いた。
四本足に戻ったのだ。
いつかトランクスに憧れた少年は、もういない。
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